ハイレゾに対応した卵形スピーカー。OlasonicのTW-S9
ちょっと聞き慣れない会社名の東和電子が、パソコンのUSB端子に直結して使える卵形のスピーカーを開発・販売しています。ブランド名のOlasonicのほうが知名度が高いかもしれません。
先日この卵形スピーカーの兄貴分となる機種が登場しました。サイズも大きくなりより音質が向上、さらにハイレゾ対応もはたしています。
今回はこの新卵形スピーカー、OlasonicのTW-S9をご紹介します。
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なぜ卵形?
多くのスピーカーは直方体といいますか、四角い形をしています。なのになぜこのスピーカーは卵形をしているのか。見た目のかわいさはその理由ではなくて、きちんとオーディオ的な意味があります。
スピーカー内部に平行な面があると、オーディオ的な特性の面ではマイナス要素になる「定在波」というものがスピーカーボックス内部で発生します。この対策のためにほとんどのスピーカーでは、スピーカー内部に余分な音を吸収するための吸音材(グラスウールなど)を詰めています。
これに対してスピーカーの筐体が卵形だと、内部に平行な面がほとんどなくなります。このため卵形スピーカーは、スピーカーボックス内部での定在波の発生が元々非常に少ないのです。吸音材も不用になるため、スピーカーが音を出す効率も良くなります。
また、卵形は物理的にもとても丈夫な形のため、不要な振動などが抑えられるメリットもあります。
加えてスピーカー外部で音の波がおかしな干渉を起こして音を濁らせる現象もある程度回避できるなど、オーディオ的にとてもメリットの大きな形が卵形なのです。
TW-S9の特徴
下位機種であるTW-S7やTW-S5でも同じ美点を持っているのですが、Olasonicの卵形スピーカーはどれもとても音の広がりや音の定位の表現が上手いスピーカーに仕上がっています。
上手くセッティングできると、スピーカーの幅を軽く超えて再生される音の空間がふわっと広がります。こういう音の広がりを表現できるスピーカーはあまり多くはないと思います。
さすがに本当の重低音は出ませんが、サイズからはちょっと想像できないぐらいしっかりと下の音も出ます。特にTW-S9では本体サイズが大きくなったことと、背面の低音放射のためのパッシブラジエーターが拡大されたことで、より低音の再生能力も上がっています。
また、ハイレゾ対応を無理なく行なうために高音用のツイーターも追加され、ハイレゾ対応を名乗るための40kHzまでの再生能力もしっかりとクリアしています。
対応するサンプリングレートは24bit/96kHzまでとなっていますが、これはパソコンにいわゆる「プラグアンドプレイ」ですぐに使えるようにするため、OS標準のドライバーで動かせることを考えたためのようです。
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バスパワーなのになぜ12.5W+12.5W?
TW-S9ではUSB3.0端子に接続したときには、最大12.5W+12.5Wの出力を実現しています。(USB2.0接続時には10W+10W)
USB3.0端子では0.9Aまでの電源の供給が可能になっていますが、5V x 0.9Aでは4.5Wにしかなりません。なぜこの電力供給で、TW-S9は12.5W+12.5Wものパワーが実現できたのでしょう?
実はここにOlasonicならではの工夫があって、スピーカーのアンプ部分に容量の大きなキャパシタ(電気を蓄えるパーツ)を持っています。
音楽の信号は音が本当に大きくなる瞬間は一瞬だけで、そのタイミングを外れれば出る音の大きさはずっと小さくなります。ボリュームを上げても平均して使われる電力はそこまで大きくなるものではない、ということです。
音のボリュームが落ちている間、余る電力をキャパシタに蓄えておき、大音量となる瞬間にはここから電気を放出する形でパワーを賄っています。このため一般的な音楽では、USBバスパワーのスピーカーとしては非常にパワフルな再生が出来るようになっています。
ちょっとPC用スピーカーと考えると高価だけれど
OlasonicのTW-S9は販売価格が2万円以上と、PC用スピーカーとして考えると少々高価です。
ですが、このスピーカーを使って実現できる音は、とりあえず音が出れば良い、というレベルのPC用スピーカとは段違いです。どちらかというと、PCをプレイヤーとするピュアオーディオの入り口、に近いスピーカーと捉えた方が良いかもしれません。
そういうクオリティでありながら、使い勝手はUSBコネクタにのみケーブルをつなげばOKと非常にお手軽。パソコンでもより良い音で色々なコンテンツを楽しみたい方には、新しい良い選択肢が生まれたのではないかと思います。
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