ハイレゾ相当?アップコンバートで音質は良くなるか??
デジタル的に見た際にはハイレゾ音源とはより一般的な音源であるCDなどよりも、原音をより高い精度で「近似」したデータということが出来ます。
CDにしろハイレゾ音源にしろ、元々完全なアナログ量で表現されている音楽をデジタル化する際には必ず誤差が生じてしまいます。
完全な再現は出来ません。
元々の音楽を近似して表現する際の誤差がより一層少ないのがハイレゾ音源、ということになります。
デジタル化、数字化したデータだけを見ると、計算でCDなどの音源データを擬似的にハイレゾ風のデータに焼き直すことも出来ます。
こういった手法を「アップコンバート」「アップサンプリング」などと呼びます。
ただ、大前提として、CDの音源データにはCD品質分の情報量しか含まれていません。
CDなどの音源データをアップコンバートしてハイレゾ風のデータを作ったとしても、情報量としてはCD品質のデータ以上のものは存在しません。
この部分は覚えておく必要があるでしょう。
それでも、アップコンバートを行うソフトやハードウェアはいくつもあり、実際に音が変化するケースもたくさんあります。
そういった原理的な部分も含め、今回は以下のような内容でアップコンバートに関する話題をまとめます。
- アップコンバートしても情報量が増えるわけではないが・・・。
- Macでアップコンバートするためのアプリ
- Windowsなどでアップコンバートに使えるフリーソフト
- SONYのハードウェアアップコンバートシステムDSEE-HX
- 実は知らないうちにアップコンバートされている?
- 販売されている音源データもアップコンバートものがある
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今風のアップコンバート
ごく単純にサンプリングレートと量子化ビット数を増やすだけなら、かなり単純な数字の計算だけで行うことができます。
ですが、今風のアップコンバートツールではもっと色々な手法を使います。
ごく簡単に言ってしまえば、データの「補間」をする、と言うことになります。
CD品質の音源データにはどうあがいてもCD品質以上の情報はありません。
それを単純に変換するだけではなく、よりいい音に聞こえるよう、データとしては存在しないエッセンスのようなものを「追加する」形になります。
SONYのDSEE-HXなど大手のメーカーが手がけるアップコンバートの仕組みでは、数多くの楽曲の解析を行って曲の傾向によってCD化の際に失われた音の成分を推測しています。
サンプリングレートなどを変換しつつ、その欠損したと「予想される」分の音のエッセンスを加えることで、「ハイレゾ風」の音を作り出します。
もちろん推測で欠損データを作り出していますので、原音に近づくとは限りません。
ですがほとんどのケースではより聞きやすい、良い音と感じられる傾向の音楽になるようになっています。
ハイレゾ相当にアップコンバートするMac用アプリ
Mac用のアプリでは、「XLD(X Lossless Decoder)」というアプリがフリーソフトとして公開されています。
ダウンロードなどのURLはこちら。
http://tmkk.undo.jp/xld/index.html
元々は名前の通り、ロスレスフォーマットの音源FLACなどをMacOS Xで再生、変換するためのアプリだったと思われます。
機能の延長としてサンプリングレートの変換機能を備えています。
XLDは寄付歓迎のアプリでもあります。
開発者の志に賛同して更なる開発を期待される方は、寄付をされるのも良いかもしれません。
ハイレゾ相当にアップコンバートする際利用できるフリーソフト
Windows系で利用可能なアップコンバート用のフリーソフトとしては、「Upconv」がメジャーどころのようです。
Upconvのホームページはこちら。
http://hp.vector.co.jp/authors/VA018963/upconv_0xx.htm
最高384kHzのサンプリング周波数にも対応できるようです。
また、CD化する際に失われる高音側の情報の補間も、あるアルゴリズムで行われていることが、明記されています。
Upconvも寄付歓迎ソフトウェアとなっています。
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SONYのDSEE-HXでMP3もハイレゾ相当?
SONYのハイレゾ対応機器には多くの場合、高音質化システムと銘打つ形で「DSEE-HX」という仕組みが搭載されています。
こちらの機能は、元々はハイレゾ非対応のDSEEが元になっています。
大本のDSEEは、MP3をはじめとする圧縮音源で失われてしまった情報を補間するための仕組みです。
これをハイレゾ音源にまで対応できる形で拡張したのがDSEE-HXとなります。
MP3などの非可逆圧縮で失われるデータに加えて、CD化する際に削られる高音域の情報も補間することを狙っています。
SONYのエンジニアが膨大な数の楽曲の解析を行って削られる音の傾向をまとめ、その情報を使って補間を行っています。
あくまで補間ですので、出来上がるアップコンバート済みの音源データは原音のものとは異なります。
ですが、実際に聴いてみると、多くのケースで音が良くなった、と感じられる音になるようです。
ハイレゾ対応ウォークマンなどをお持ちの方は、CDクオリティの音源データで一度試してみる価値はあるでしょう。
内部的にアップサンプリングされていることもあるデジタルアンプ
アップサンプリングという意味では、USB DAC内蔵のデジタルアンプなどでは、内部的にどんな信号も高いサンプリングレートにアップコンバートされてから再生される機種もあります。
TEACのReferece01シリーズのデジタルアンプやUSB DACなどがそういった製品の一つです。
元のデータをそのまま再生しませんので、音の傾向はアンプによってある程度変化します。
それが良い音に聞こえるか、好みの音でないかは、使われる方の耳次第、という部分は残ります。
moraのハイレゾ音源にもアップコンバートされたものがある
実はmoraやe-onkyoなど、ハイレゾ音源の販売サイトで扱われている音源データの中にもアップコンバートされたデータがあります。
単純に安易なアップサンプリング手法を使ったものではなく、音源提供元の会社が音作りから見直した音源であることが多くなっています。
ただ、元々のマスター音源がハイレゾ収録ではなかったものがあることも事実です。
そういった音源では、必ず曲の説明のところに音源の由来が明記されています。
その部分はしっかり確認して、納得した上での購入をするようにしましょう。
まとめ
- 今どきのアップコンバートは単なる数字の変換ではない
- Macで使えるアップコンバート対応アプリの代表格の一つはXLD
- Windows系のアップコンバートソフトならUpconv
- SONYのDSEE-HXもアップコンバート対応のハードウェア
- デジタルアンプでは内部的にアップコンバートが動いていることがある
- 販売されているハイレゾ音源の中にもアップコンバートのものがある
ハイレゾ音源のアップコンバートを巡る状況をまとめてみると、以上のような形になります。
対応機器から販売されている音源、ユーザーが音源を変換して「遊べる」部分まで、幅広いジャンルにアップコンバートがかかわっています。
今はソフトウェア側でもハードウェア側でも、単なる数字いじりに留まらない高度なアップコンバート処理が行われています。
これにより原音再生とは微妙に異なりますが、多くの人が音質が良くなったと感じられる再生も出来るようになっています。
「ニセレゾ」などの揶揄もありますが、先入観にはとらわれずに一度試してご自分の耳で実際の音を確認するのが一番のやり方だと思います。
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